
夫が日本、母子がマレーシアという「逆単身赴任」で教育移住を実現したもえこさん。連載終盤では、親子で過ごした6年を振り返って、「教育移住で失敗しないために大切なこと」について語ってもらいます。
マレーシア歴6年で習得したマインドセット
一口に「教育移住」といっても、そのスタイルは家族によって様々です。
英語力を高めてグローバルに羽ばたき、将来は海外大学へ進学――!
これだけが教育移住の目的ではありません。受験や競争から離れてのんびりと暮らすことを目的にする人もいるし、母国に帰った時に受験で無双するための実力つけたいという人もいるでしょう。
欧米の英語圏に進出する前段階としての滞在も有効ですし、まずは海外生活を経験してみようという冒険の始まりにも最適かと思います。私のように、子どもと一緒に海外生活をしてみたかったという動機もありでしょう!
そう、“どう転んでも失敗なんてない”と、私は考えています。 期待通りには物事が進まない海外生活において、 “失敗なんてない!全ては経験だ!”というマインドで生きることが、何よりも大切かもしれません。
誰もが経験する不安な時期
・期待したほど学校のサポートが無い
・なかなか生活環境や学校生活に慣れない
・英語力が伸び悩む
・不便でイライラして、日本が恋しい
……これらは、おそらくほぼ全員が一度は経験する苦悩だと思います。
加えて私は、コロナ禍によるロックダウンで不安定な時期を経験しました。母子だけの時間に行き詰まって苦しくなったり、異国で子どもの安全を確保しながら生活する責任のプレッシャーをストレスに感じたりもしました。
そんな時は、ビーチでただぼーっとして弱った心を慰めたり、街中の雑踏の中で活気ある人々を観察したりしていました。

そして私が辿り着いた心もちは、「昨日の自分より今日の自分」、「外国暮らしを母子で挑戦できているだけで素晴らしい頑張り!」と、自分で自分にいいね👍をつける肯定感です。
そもそも、異国で生活をするということ自体がタフなこと。
不安な時期をなんとかもがきながら工夫して適応したり、諦めて現状を受け入れたりなど、自分なりの乗り越え方を見つければ、基盤が安定していきます。何よりも、自分で立ち向かって問題解決をしたという経験が自信に変わっていくものです。これが海外移住の醍醐味ではないでしょうか。「自分で自分の人生をドライブする」という主人公感を日々、強く実感しています。
「マレーシアは(いろんなことが無茶苦茶で面倒なこともたくさんあるけど、それを上手いこと受け入れたら)最高だよ!」
この行間を実感し、体験できることが貴重で尊いことだと思っています。
一度体験してみて、肌に合わず受け入れられないと判断したら、日本に戻ったり別の国に挑戦したりするのも良いですよね。その場合は、「マレーシアが合わなくて失敗だった」のではなく、「マレーシアは合わないと分かったことを成功」と思えばいいのではないでしょうか?
日本ではありえない?こんなことも

外国人かつ第二言語という不利な状況の中でも、学校生活をサバイブしている子どもたちは勇敢そのものです。
そして親も、学校の先生をはじめ不動産エージェント、大家、銀行窓口、コンドミニアムの守衛さんなど、日常を過ごすだけでも様々な人と対峙して都度問題解決をしていかないといけません。問題と不便があるのは当たり前です。
例えば、こんなことがありました。
ある時、部屋のカーテンレールが落ちたので、不動産エージェントに連絡し修理屋を手配してもらいました。ところが、長い時間作業しているにも関わらず直りそうな気配が全くなく……修理屋も諦めたのか、外れたレールをそっと金具の上に乗せて帰っていきました。
去り際に「直したけど動かさないようにね」と言い残していきましたが、明らかに直っていません(笑)。当然、カーテンレールはまたすぐ落ちるので、不動産エージェントに改めて連絡し、「あなたの手配した修理屋が直せなかったので、やり直しをしてくれ」とリクエストします。
一時が万事こんな感じで、スムーズに行くことはあまりありません。3つ質問しても1つしか回答が返ってこないのも普通。尋ねる人によって答えも違う。前回はOKだったのに今回はNGなど、納得できる理由がないこともしばしば。
日本で“当たり前”と思っていたことは、日本を出た途端に通用しないということを身をもって学べます。たまにスムーズに事が進むとそれはそれは嬉しくて仕方ありません!期待値が生活実態と合ってくると、ストレスをあまり感じずにすみます。
過度な期待をせず、自分にできることを
ところで、何事においても失敗と感じてしまいがちなのは、誰かに過度な期待をしすぎているからではないでしょうか?
例えば、留学すればもっと手取り足取り学校が指導してくれると思っていたのに、実際はそうでなかったという場合。子どもや学校など、第三者に期待しすぎていたというケースです。
日本だと、お金を出してサービスを買えば、それ相応の品質が担保されるのが普通の感覚ですよね。でも海外ではそれは普通ではありません。

学校にこちらの望む指導をしてほしければ、自分でそうした環境を作ろうと努力しなければなりません。保護者として積極的に学校に関わる、普段から先生とコミュニケーションを取る、子どもの状況を共有して良い関係性を築く、などが下準備になります。
また大前提として、子ども本人が学校生活を楽しめる心の準備や環境を親が整えてあげること、手助けが必要な時に自分から先生にヘルプを出せるようにサポートすることも大切です。
家庭で事前に準備できていなかったり、先生との信頼関係を築けていなかったりするのに、急に学校にクレームという形で要望を突きつけても状況の改善は期待できないかもしれません。同じ金額を払っていたとしても相応のサービスを受けたかったら、こちら側がそれに見合う人物である必要があるなと常々感じています。
私のおすすめは、学校が募集する保護者ボランティアに参加することです。
できる時にやりたい人が参加する、というのが我が子が通うインターでのスタイル。やりたい人が集まってワイワイ楽しんでやるので、保護者同士も仲良くなりやすいですし、学校や先生の様子もよく分かるし、良いことだらけです!私も子どもの頃にこの学校に通いたかったなぁと思いながら、子どもたちを見守る意識で保護者の1人としてコミュニティに参加しています。
我が家の現在地とこれから

さて、長女が6歳、長男が4歳の時に始めた我が家の教育移住もあっという間に6年経ち、長女は来年Year8(インター校では中学生)になります。学習面と金銭面で新たな課題と向き合っているところです。
学習面では、進学を見すえて準備していく時期に入ってきました。このまま英国式のカリキュラムで学習を続けるのであれば、IGCSE(英国の義務教育修了資格)の試験に向けて成績も気にしなければいけない学年に。
金額面では、中学から学費が大幅アップするので、どこまで継続して教育費をかけるかを再検討中です。円安もあり、当初マレーシア留学生活の魅力だったお得感はもはやありません。
今後の選択肢としては、
・学費の安いマレーシア国内のインター校へ転校する
・英語圏で仕事を見つけて移住し、子どもを現地校に通わせる
・日本の学校に戻り、オンラインで英語学習を継続するハイブリット式を検討する
など、いくつかのプランを考えています。
もう一つの気持ちの変化は、家族一緒に住みたいと強く感じ始めたことです。子育て期間も後半分と折り返しになるタイミングで、日本に夫、マレーシアに私たち母子という生活をそろそろ解消したいとも考えています。
先を見据えて計画を立てて挑戦するのももちろん大切ですが、こんなにマレーシア生活を気に入って長く生活をすることも、円が弱くなり続けていくことも想像していませんでした。
未来が分からない中進んでいくには、家族のチームとしての試行錯誤や努力が必要不可欠だなと日々実感しています。
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