
20代後半でインドに飛び込み、順調にキャリアを重ねていたはずの立田千菜美さんが直面したのは、「これまでの自分の前提が崩れ去る」という体験でした。
「キャリアは、外側の環境ではなく、内側の状態から決まる」。
それまでの常識もアイデンティティも解体されたカオスのなかで、彼女は何を手放し、この考えにたどり着いたのでしょうか。正解のない問いに向き合い続けた軌跡を、千菜美さんによる全5回の連載でたどります。
「インド就職って、実際どうなんですか?」
最近、こういう相談を受けることが増えてきました。
海外キャリアの選択肢として、成長中のインドを考える人が増える一方で、
「自分に合うのか」「行って後悔しないか」「危なくないか」と迷う声も多いと感じます。
結論から言うと、インドは成長意欲の高い人には特におすすめできる国のひとつです。
- 圧倒的な成長市場の中で、若いうちから裁量を持って働ける。
- 多国籍な環境で、生きた英語を使いながら仕事ができる。
- 日本人がまだ少ないからこそ、自分の役割や存在価値を広げやすい
でも、私がインドで実際に働いてみて強く印象に残ったのは、そういう“キャリアのチャンス”だけではなく、人間としての内面を揺さぶり、人生観が変わってしまうような経験でした。
「海外に行けば、自分が見つかる」と思っていた私にとって、
インドは、想像以上に人間くさい場所だったんです。
「もっと、もっと」と次を求めた若い頃のキャリア観
インドに就職する前、20代後半の私のキャリア観は以下のようなものでした。
いい環境に身を置き、経験を積み、スキルを磨く。
そうやって正しい選択を重ねていけば、キャリアは自然と形になっていくだろう。当時の私はそう思って疑っていませんでした。
大学卒業後、日本で3年半働き、26歳でインド就職を実現。日系の人材紹介会社のインド拠点に立ち上げメンバーとして参画し、現地の日系企業とインドの求職者を繋げる仕事をしていました。
古いビルの中で、数名の日本人とインド人の同僚とともに、0からビジネスを立ち上げるのはまさに「スタートアップ」という感じのエキサイティングな環境で、周りから見れば恵まれたキャリアだったと思います。

それでもどこかで、ずっと「次」を見据えていました。
もっと成長できる場所へ。
もっと自分を広げられる環境へ。
もっと“グローバルな人材”に近づける場所へ。
なぜこのように考えていたのか。振り返ると、その原点にはひとつの言葉がありました。
「これからはアジアの時代だ。
インドは世界の工場から市場に変わる。自分の目で見てきなさい」
学生時代にインドに留学した時、先生に言われたその一言が、ずっと頭から離れなかった。
そのとき私は、「いつかインドで働く」と決めました。
そして実際に、20代後半でその選択を実現したのです。
だからこそ、社会人としてのインドでの生活は、
自分にとって“正しい流れの延長線上”にあるはずでした。

実際に訪れたのは “何者でもなくなる”という経験
でも……。
念願のインド就職を果たした私に実際に起きたのは、
「何者かになること」ではなく、
“何者でもなくなる”という体験でした。
自分で決めてインドに来たはずなのに、
自己実現できているはずなのに、どこか手応えがない。
毎日のように新しい人に出会う。
刺激的な会話もある。
でも、何かがズレている。
日本で「自分の強み」だと思っていたものが、うまく通用しない。
空気も、価値観も、仕事の進み方も違う。
「今日中に返すね」と言われた連絡が、数日返ってこない。
日本では当たり前だったことが、何一つ当たり前じゃない。
気づけば、「なんでこの人たちは、こんなに適当なんだろう」。
そんな風に、気づけば人や環境のせいにしている自分がいました。

インドという場所は、むしろエネルギーに満ちていて、
多様で、混沌としていて、圧倒的に面白かった。
働く環境を変えれば、人生も変わると思っていた。
でも、実際はそうじゃなかった。
インドは、人生を変えてくれる魔法の場所ではなく、
むしろ、自分が信じていた“前提”を、静かに壊していく場所だったんです。
キャリアの節目にいるあなたに、「インドのリアル」を発信
海外就職には、メリットも、しんどさもあります。
でも、自分の前提が通用しない場所に身を置いたからこそ、
見えたものが確かにありました。
ググれば見つかる情報ではなく、
実際にインドで学び、働き、暮らしたからこそ見えたリアルを、
これから少しずつ書いていこうと思います。
このブログでは、正解を教えるというより、
人生やキャリアの節目にいるあなたと、
一緒に整理していくような対話ができたら嬉しいです。
次回は、「インドで、“キレるか悟るか”を試された話」をテーマに語ります。
Namaste!
著者紹介
立田千菜美さん
プロフィール
中国・アメリカ・インドでの留学・就業を経て、「キャリアは内側の状態から決まる」と実感。現在は福井を拠点に、禅や呼吸を通して意思決定を整え、海外就職を含むキャリア選択を支援。GJJ海外就職キャリアコンサルタント。2児の母。




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